こんにちは!

先日発売になったばかりの 2026 年のリネン カレンダー
今回は 3 人の作家さんにデザインをお願いしていて、今日はその中のおひとり、
画家・荻原 美里さんの描いた美しいリネンカレンダーをご紹介します。

今回のテーマは「ベルギーの穏やかな日々の風景」。
ベルギーでの旅で出会った風景や、静かに流れる運河、森に暮らす動物たち。どの絵からも、それぞれの場所に息づく暮らしのあたたかさや、荻原さんの小さな感動が伝わってきます。

カレンダーのタイトルは「やさしい時間」、「森のささやき」、そして「いつもの暮らし」。
今日はそれぞれのデザインについての想いを伺いました。
荻原さんが撮影されたベルギーの美しい写真と一緒にお届けします。



( fog )
荻原さんがベルギーを訪ねたのはいつ頃、またどのようなきっかけだったのですか?

( 荻原さん )
ベルギーを訪ねたきっかけは、ずっと会いたいと思っていた陶芸家の Marie Brisart(マリー・ブリサール)さんにお会いするためでした。
マリーさんはベルギーのブリュッセル近郊の小さな街、エヌイエールにアトリエを構え、暮らしの中で使われる器を中心に制作されています。
その器はレストランでも使われていて、モダンでありながら色や質感にも柔らかさがあり、とっても素敵なんです。

画面を通して見ていた彼女の暮らしや器には、私自身の波長と通じるものがあり、いつか直接お会いしてお話をしてみたい、そして器を手にとって触れてみたいと、7 年ほど前からずっと願っていました。
やっと今年の 2月にそれが実現し、彼女の家を訪れることができました。

( fog )
リネンカレンダー「やさしい時間」はマリーさんを訪ねた時の印象を描かれたのですね。

( 荻原さん)
はい。エヌイエールは緑が多く、のどかな田園風景に囲まれた静かな村で、地元の人々の暮らしがゆったりと流れています。
古い石造りの家や農場が残る穏やかな場所でした。


マリーさんのアトリエには羊が 5 匹、鶏や犬、猫がいて、みんな名前がついていて、マリーさんが呼ぶと嬉しそうに集まってくるのです。
温もりにあふれた素晴らしい暮らしぶりに心を打たれました。

「やさしい時間」はその情景を通して、みなさんの日常にもそんなやさしい豊かな時間がそっと流れていったら…という願いを込めて描きました。

( fog )
穏やかな空気感が私たちにも伝わってきます。
荻原さんご自身は、日々の暮らしの中で「やさしい時間」を感じるのはどんな瞬間でしょうか?

( 荻原さん)
たとえば空を眺めながらコーヒーを飲んでいるひとときや、愛犬と一緒にのんびり公園を散歩しているときです。
朝、植物へ水をあげる時間もまた、心が静かに整う大切な瞬間だと思います。
( fog )
ブリュッセル郊外で他に印象に残った場所などありますか?

( 荻原さん)
自然あふれるユルプ城の敷地内にある、かつて農小屋だった建物を改装してつくられたフォロン ミュージアムです。


( fog )
フォロン ミュージアムはどんな所なのか教えてください。

( 荻原さん)
ここは、ベルギーを代表する画家・イラストレーターのジャン=ミシェル・フォロンの作品が集められた美術館で、彼の世界観をまるごと体感できる場所です。

受付でチケットを買うと、大きな本の扉がゆっくりと開いて展示が始まる演出があり、とても素敵でした。
フォロンのユーモアや詩的な感性に包まれながら、森の中で過ごすような心地よさを感じられる特別なミュージアムだと思います。


「森のささやき」はそこを訪れた際に目にした森の風景や動物たちをイメージして描きました。この絵を通して、みなさんの毎日の暮らしの中にも、動物たちの楽しげなささやきや、自然の音に耳を澄ませるような、そんな豊かな時間が流れていったら嬉しいです。( 少しわかりにくいですが、猫もこっそり描かれています。ぜひ探してみてくださいね )

( fog )
荻原さんの絵の中の動物たちをみていると、まるで物語がはじまるように感じますが、絵を描かれる時、なにかイメージして描くことはありますか?

( 荻原さん)
絵を描くとき、動物たちはただそこにいる存在ではなく、私の中で物語を運んでくれる大切な登場人物のように感じています。
出会ったときの仕草や目の輝きから想像をふくらませ、その子がどんな日々を過ごしているのか、どんな声で語りかけてくるのかを思い描きながら筆を進めています。そうすることで絵に奥行きが生まれて、見る人の心の中にも小さな物語が広がっていったら嬉しいです。

( fog )
今回のご旅行では他の街にも?

( 荻原さん)
はい。ブリュッセルから電車で 1 時間ほどのブルージュという街も訪ねました。
ギザギザとした赤茶色の屋根をもつ特徴的な家が立ち並び、まるで絵本の世界に迷い込んだかのような穏やかな景色が広がる美しい中世の街です。

ブリュージュは街のあちらこちらで暮らしの一部として開かれている蚤の市、犬との散歩やお茶の時間、優雅に泳ぐ白鳥たちなど、心あたたまる光景がありました。「いつもの暮らし」ではそんな日常のひとこまを絵にしてみました。

( fog )
日常を描くときに、心が動いた小さなものや小さなこと、そして風景があれば教えてください。

( 荻原さん)
それは、光や風、匂いといった感覚を呼び起こしてくれるものです。
たとえば差し込む陽の光のやわらかさや、季節の風の動き、ふと漂ってくる花や土の匂いなどでしょうか。


( fog )
このカレンダーを手にする人に、どんな気持ちや時間を届けたいと思われましたか?

( 荻原さん)
忙しい毎日の中で、ふっと心が和らぎ、やさしい気持ちになれるような時間をお届けできたらと思っています。
ほんの少しでも自然や暮らしの温もりを感じ、安心や豊かさを見つけてもらえるような、そんな日々の寄り添いになれば嬉しいです。

( fog )
今日は素敵なお話、そして美しい写真をありがとうございました!

荻原 美里 Misato Ogihara

画家、イラストレーター。
年に数回開催する個展を中心に、書籍、広告、パッケージなど、多岐に渡る分野で活動。自然や鳥、動物たちを愛し、テーマになることも多い。
東京と山梨の 2 拠点で生活。